昨日(2月4日)午後、大阪地方裁判所第9刑事部が斎藤建材事件の判決を下した。
内容は以下のようなものであった。
Y執行委員 傷害罪で懲役1年6カ月、執行猶予3年(求刑1年6カ月)
M執行委員 傷害罪につき無罪(求刑1年6カ月)
W組合員 器物損壊罪で罰金20万円(求刑1年)
N執行委員 公訴棄却(求刑10カ月)
この裁判では、公判がすすむ中で、4人全員にきっぱりと無罪判決を書く以外に裁判所の選択はないことが明らかになった。それにもかかわらず、裁判所は今回の判決で、M執行委員に無罪、N執行委員の公訴を棄却したにとどまった。他方、警察と検察の顔を立てることに腐心して、むりやりY執行委員らを有罪した。その意味で、この判決は政治的作文といわざるをえない。
あらためて振り返るまでもないが、この事件は、斎藤建材(大阪府高槻市)という生コン会社の労働組合弾圧に端を発している。残業代の不払い、昼休みも有給休暇もない、社会保険もないという法律違反だらけの職場で、労働者たちが連帯労組関西地区生コン支部に加入すると、斎藤建材は山口組系暴力団を会社役員に雇い入れて組合つぶしを開始。団交を拒否すると同時に、暴力団が組合員に「会社をとるか、組合をとるか」と迫った。そして、その脅しに負けなかった組合員4人を会社は懲戒解雇したが、昨年夏までに、懲戒解雇については大阪府労働委員会、大阪地方裁判所で全て組合員が勝利命令、勝訴判決を獲得している。こうした会社に対する団体交渉の申し入れ(07年3月)という正当な労働組合活動に強引に介入し、むりやり刑事事件を仕立て上げたのが斎藤建材事件である。大阪府警は2カ月後の5月、組合役員ら4人を逮捕。無罪を主張するかれらを、大阪地検は、接見禁止のまま95日間も勾留した。
検察はこの事件で、団体交渉申し入れに出かけた組合役員らと会社の従業員Aのあいだでもみ合いがあり、そのAが転倒したのち負傷したことをとらえてY執行委員とM執行委員を傷害罪で、また、もみ合いの際に、別の従業員Bがバイクで突進してきたのでW組合員がキーを抜いて再発を防ごうとしたこと、ビデオ撮影していた従業員のカメラをN執行委員が取り上げたことを、それぞれ窃盗罪として起訴した。
これに対し、大阪地裁判決は、まず、Aに対する「暴行」について、犯人の1人とされたM執行委員については、「Aの犯人識別供述には、その信用性に疑いを入れる余地がある」、「MがAを暴行した証拠はない」として無罪だとした。
だが、Y執行委員については、かれがAを殴ったり蹴ったりした証拠がないことを裁判所は認め、しかも、「Aが組合員ともみあっている状況を目撃した」と称する会社側証人も「Aを実際に暴行している人物について特定できない」ことも認めているのに、無罪としなかった。裁判所の理屈はこうである。Y執行員は直接に暴行を加えていないかもしれないが、他の(氏名不詳の)組合員がAに暴行を加えていたことを認識しながら、これを制止したりなどしていない状況に照らすと、「他の組合員と共謀したと優に認められる」、だから有罪だというのである。
Aに「暴行」を加えたのがY執行委員でないことは裁判所も認めざるをえないし、実際に「暴行」した者は特定できない。そればかりか、そもそも「暴行」なるものが存在したかどうかすら疑わしい。それでもY執行委員は有罪だというのだからおそれいった話である。ともかく誰かを犯人にしないと警察と検察のメンツがつぶれる。そう考えて裁判所はY執行委員を生け贄にしたと理解するしかない。
N執行委員とW組合員に対しても同様である。N執行委員については会社側から有効な告訴がないことが明らかになり、裁判所は公訴棄却とせざるをえなかった。しかし、W組合員については、団交申し入れ中の組合員らにバイクで突っ込むというBの暴力的行動は不問にしておきながら、Bに再びそのような行動をとらせないようにキーを抜いたW組合員の行動を犯罪だというのである。
このように大阪地裁の判決は、斎藤建材事件の本質を見ようとはせず、正当な労働組合活動に介入した警察・検察の不当な行動をかばい立てしたものであるというほかない。
大阪府警と大阪地検は、連帯労組関西地区生コン支部に対する一連の弾圧政策の延長線上で今回の事件をむりやり創作したことは明白である。そのかれらの無法な権力濫用が、奴隷的労働条件からの脱出をめざした労働者の正当な権利行使を、暴力団を使ってつぶしにかかった斎藤建材の反社会的行動をかばい立てするものとなっている現実を、裁判所は直視すべきである。
この間、平和フォーラムや交運労協に加盟する各単産、さらには各地のユニオンなどから無罪判決を求める緊急署名活動に絶大なるご協力をいただき、1カ月足らずで723労組・団体、7,885筆の署名を集約し、いまなお多数の署名が連日到着している。こうしたご支援・ご協力に心から感謝申し上げるとともに、われわれは、この不当判決を正し、4人の組合役員らの完全無罪を勝ち取るたたかいを続け、同時に、警察、検察、裁判所の不当な姿勢を正すたたかいに連帯していく決意を明らかにするものである。 |