<原子力発電所の問題点> 現在、全国に54基の原子炉が存在し、建設計画中のものが14基ある(上図参照)。 『東京電力』は、福島第一原発1号機が1971年に稼働を始めてから、福島県と新潟県で3カ所の原発に17基の原子炉を保有、自社の電源設備、総発電量の3割近くを原発が占めている。 原子炉の寿命を考え、電力各社は当初30~40年の運転を想定 していた。今回被災した福島第一発電所の1~6号機までの原子炉は運転開始から30年以上経つ老朽炉で、本来ならば廃炉になるところを、定期点検や大型修理を行って稼働させていた。 <『電源交付金』の魔力> 廃炉しない理由に〝原発を誘致した自治体には巨額の『電源三法交付金』が政府から支給される〟という背景がある。 2010年度、政府は『電源三法交付金(①電源開発促進税法②特別会計に関する法律=旧電源開発促進対策特別会計法③発電用施設周辺地域整備法)』の中から原発がある全国の自治体に、電源立地地域対策交付金=1.097億円、電源立地等推進対策交付金=75億円、電源地域振興促進事業費補助金=76億円、と合計1,248億円を支給している。 その資金でハコモノ(庁舎、公民館、スポーツセンター等々)を建て、工事はゼネコンが受注。一部は電力会社にキックバックされ、電力会社はマスコミ対策のための宣伝費(原発普及開発関係費)として使う。交付金の一部が回り回って、電力会社も恩恵に預かっているのだ。 <原発で地場産業が衰退> 135万キロワットの原発1基が新設された場合、所在地および周辺市町村、都道府県に支払われる電源立地地域対策交付金の総額は、誘致から環境影響評価を経て10年後に運転を開始し、35年間運転したと仮定すると45年間で1215億円となる。 福島第一原発の場合、1~4号機が立地している双葉郡熊田町に約4千8百億円が、5、6号機が立地している双葉郡双葉町には約2千430億円が45年間で落ちる。さらに〝原発という巨大施設〟にかかる固定資産税を手にすることができる。 しかし、原発を抱える自治体は税収不足を交付金に依存するため、地域産業の育成を遅らせていく。前出の双葉町では、08年度決算で自治体の収入に対する借金返済の割合を示す実質公債費比率が基準値25%超の29・4%となり、09年度には『早期健全化団体』に指定された。 交付金を受け取っているにも関わらず、自治体が赤字に転落するのには理由がある。交付金が10年を超えると『半減するシステム』になっていることと、『固定資産税の原発法定原価償却期間が16年と定められており、これを超えると激減してしまう』というカラクリだ。 <赤字解消にまた原発を> 大抵、原発を受け入れた地域は最初の10年間で公共のハコモノ建設を連発する。11年目からは交付金が半減するので維持費負担が増え、自治体の財政は赤字になる。この頃には原発が産業の中心になっているので元々の地域産業が衰退。赤字を解消するため、仕方なく新たな原発を誘致して、また交付金を手に入れようとする。 双葉町も7、8号機の建設を決議。12年着工に向けて07年から年間9億円を超える交付金を受け取った。 <琵琶湖がやられたら・・・> 私たちが暮らす関西地方も福井県・若狭湾に〝原発銀座〟を抱えている。ここに福島第一原発のような事故が発生すれば、30キロ圏内に〝関西の水がめ〟琵琶湖があるので生活用水が使用出来なくなり、壊滅的な事態になる。電源交付金という〝甘い蜜〟に惑わされている間に放射能被曝が起きて、関西の政治・経済・生活が破壊される。戦争が起きなくても原発事故で国が滅びることを誰が想像していただろう。 私たちは電力会社が垂れ流す〝安全神話〟を信じていたことを反省し、今こそ全ての原子炉を停止させて、原発に頼らないエネルギー政策に変換すべきである。 ◆この項は交付金制度の内容を解説・批判するもので、自治体を糾弾するものではありません。 (くさり7月号より)
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