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「原発は安全だ」。その神話が崩れ去った。福島第一原発は今も危機的状況にある。冷却装置のダウン、水素爆発、放射性物質の大量放出。これらを「1000年に1度の天災」のせいにして片付けることは許されない。今こそ、反原発・エネルギー政策の抜本的転換に向け声を上げよう。3月18日には、東京・明治大学で反原発運動を推進する「たんぽぽ舎」主催の集会が開かれた。そこでの槌田敦(つちだ・あつし)さんの講演要約を紹介する。(記事提供・コモンズ編集部) | ||
<深刻な原発事故の経過> 原発事故が起きた時にはまずその原発を止めるのが原則。その時には緊急炉心冷却装置(ECCS)を作動させるが、福島原発では5号炉と6号炉だけは高い場所にあったので装置が作動した。また両原子炉は点検中だった。ところが1号炉から4号炉は1基につき3台ずつと予備が1台、計13台のECCSがあったが、低い場所に設置されていたため全部津波でだめに。また3号炉と4号炉は使用済み核燃料を入れておいたプールの水が干上がった。 <「炉心溶融」という発表> ウラン燃料の融点は2800度で、それ以上になると炉心溶融が起こる。スリーマイル島の原発は事故の5年後にフタを開けて初めて炉心溶融が起こっていたことが判明した。それまで米政府は「炉心溶融はない」と「証拠」まであげて言い続けていた。 今回、日本政府は水素爆発が起こった事を「証拠」に、事故後ただちに「炉心溶融」の可能性をあげている。この水素は燃料棒に使われているジルコニウムが高温で水蒸気と反応した結果生まれたものである。東京電力はジルコニウムについて一切触れず、新聞にも報道されていない。炉心溶融は内部に水が残っていれば起こり得ない。炉心溶融という最悪の事態を最初に持ってきたのは、「それよりは軽度の事故だ」という印象をつくるためである。 <スリーマイル・チェルノブイリの教訓> 今回の事故の経過はスリーマイル島事故の時とそっくりだ。原子炉内の圧力が上がってしまったため、ポンプで水を入れようとしても入らない。スリーマイル島事故の経験に学べばよかったが、東京電力はそれをしなかった。 今回の事故が起こった時に、「主蒸気止め弁」を止めてしまったので内部圧力が高まってしまった。その結果、放射性物質を伴った蒸気が外に漏れてしまった。主蒸気止め弁を開ければ圧力が下がり、内部に水を送り込めるので解決するはずだが、そうしていない。知識の無い人間が操作しているのではないか。 東京電力の保安員は原子炉内部に海水を流し込んだらしい。海水を入れれば高温で塩が固まり、燃料棒のすき間をふさいで水が流れなくなり、冷却を妨げることになる。また3号炉と4号炉には外からヘリコプターなどで水をかけているが、使用済み燃料を入れるプールが空焚き状態になっているのに水で冷やすのは危険。焼けたやかんに水をかけるようなもので、水蒸気が大量に発生し燃料棒は崩れてしまう。 チェルノブイリ事故では上から鉛を落とした。鉛は300度で溶け、燃料を包む。また冷却に液体窒素を使った。こうした教訓を全く活かしていない。東京電力はそれをやる気がなかった。私(槌田)が手紙でアドバイスしたが、彼らは反原発派の意見など聞く耳をもたない。 <過去の事故との類似点> 今回の事故はスリーマイル島の事故と同じくECCSポンプの事故で始まり、そしてチェルノブイリ事故に似た経過を辿っている。チェルノブイリ原発は格納容器が無く、原子炉爆発によって大量の放射性物質が大気中に放出された。しかしスリーマイル島事故は格納容器の中に炉心溶融による放射性物質の大部分を閉じ込めることに成功。牛乳が飲めない事態にもならなかった。 しかし、美浜事故において日本で初めて放射性物質が漏れた。今回はそれとは比べものにならないほどの高レベルの放射性物質が漏れ出ている。 <問われる政府の責任> 原発の正門前では10ミリシーベルトの放射能が測定された。放射能のレベルについては10倍ごとに変わっていく。風向きによっても変わる。風はさまざまな方向に変化するので必ずしも風上だから大丈夫とは言えない。雨は空中の放射性物質を集めて降るので濃縮されている。 1960年、原子力産業会議が極秘報告書を出した。報告書ではもし原発事故が発生した場合、天候の状況によっては720人の死者が出ると試算されていた。当時は電力会社も産業界も原発に消極的だったので「ありのまま」の試算結果を報告。720人も死者が出れば補償で企業が潰れる。 政府はこれに対して「その場合は政府が補償する」として推進させた。危険性を知りながら原発を推進した政府の責任は重い。(くさり4月号5面より)
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新たな国土づくりへ。今こそ真の公共事業を! 津波に立ち向かう スーパー堤防津波に立ち向かう スーパー堤防 東日本大震災では湾岸部の堤防や港湾施設のほとんどで壊滅的損害を受けたが、そこで再注目を集めるのが大津波被害に立ち向かう<スーパー堤防>だ。住民の命を守り、国土を保全する観点から全国的に整備が急がれるこの堤防の概要を解説する。 通常堤防は水が上を越すと土砂が削られ、堤が破れ被害を招く。その際の、急速な崩壊を招かぬよう後背地の傾斜を3%以内の緩やかにしたものがスーパー堤防。水が堤防高を越えても堤内に緩やかに流れ落ちるため被害が小さくなるほか別記の利点がある。 1987年に国土交通省が事業化し、千葉県の利根川沿いに完成したものが第一号。ほかに江戸川、荒川、多摩川。関西では淀川、大和川などで整備が進められている。これら堤防事業は百年から二百年に一度の大洪水を想定しているが、建設には膨大な時間と費用が必要。また堤防全体を高規格化するまではその治水効果は十分発揮できない。 利根川では全体の高規格化に千年要するとの試算もあり、2010年10月の事業仕分け第3弾でスーパー堤防事業は廃止と判定された。しかし、東京都はこの判定を強く非難している。
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