＜人的・知的な後方支援を続けたい＞
シンポジウムには、震災直後から被災地支援に関わった近畿生コン関連産業人を代表し、武委員長（組合総研代表理事として出席）が発言者として参加。被災地復興に関して人的・知的な後方支援を続けたいと表明し、組合総研の理念である「共生協同」思想の前進にむけて邁進するとして、会場の共感を誘いました。

発言者は口々に、村井宮城県知事が先に打ち出した復興特区構想は緊急災害時に市場原理主義者がとってきた「ショックドクトリンさながら」と批判。発起人の大内秀明東北大学名誉教授は被災地の復興イメージとして下記のアピールを行い、今後への動きを示唆しました。

■主な発言者の意見

大内秀明東北大学名誉教授
大量生産・大量販売・大量消費、使い捨て、そういう文明の大転換が今だと考えたい。４月初めの新聞に掲載された、「アメニモマケズ」の宮沢賢治のような強さを求める時代が来ている。
協同組合の力で特区を解放区にする。自然エネルギー発電や水を中心に地域のコミュニティー網をつくる。これが本当の協同組合精神ではないか。生産と消費と流通をつなぐ協同組合の根本に戻り、仙台に新しいコミューンをつくったらどうかと思う。

木村稔宮城県漁業協同組合前会長
特区の問題だが、知事は漠然と東京の復興会議で「特区宣言」をしたが、これでは民主主義の根幹をトップが破っている。海を預って何百年の我々に一言もなく、海の権利を民間にやるとはどういう考えか。知事はわれわれの話も聞き入れない。そのまま民間にやらせるという。それでは、おかしい。特区には１万人の漁師全てが反対している。

山本伸司パルシステム生協連合会理事長
生産物を通じパニックを避け、役割を担った。３・11でマスコミは手の平を返した。原発容認の週刊誌も今では危機感を煽る。そんな状況で正確な情報～産地での農産物検査を隠さず公表するということは極めて大事。以前からの主題であった「生きる」とか「食べる」の復権。お金に代えられない富の創造といった協同組合運動を広げていく決意だ。

武建一中小企業組合総合研究所代表理事
まず私は、被災者のみなさんが人間の尊厳をかけてがんばっておられる。あるいは、闘っておられる。こういう姿に心より敬意を表したいと思います。
関西も１６年前に阪神・淡路大震災を経験いたしましたが、本当にこの地域の震災、津波、原発というのは、想像を絶するような被害であります。気持ちの上で、みなさんのがんばり、闘いに共鳴すると同時に、私どものできる範囲においては全力を尽くして支援を続けていきたいという決議を最初に申し述べたいと思います。

私は組合総研の代表もしておりますが、もう一つの顔がありまして、近畿２府４県の生コン製造、ミキサー車の運転手などを中心として組織しております関西地区生コン支部という労働組合の執行委員長を今年で４６年間やっております。非常に個性のある労働組合でして、１９８０年代に、「資本主義の根幹に触れる運動だ」と、当時の日経連の会長に言われました。

全国に協同組合という名が付くものは５万くらいあると言われております。生協もありますし、農協もありますし、漁協、林業協同組合、いろんな協同組合がありますが、私どもが関係しているところは、事業協同組合です。
この事業協同組合と労働組合を調査・研究して、そこに積極的な提言をしていこうと。特に日本の場合は、重層的支配構造。大企業が上にいて、下を分断・支配しておりますから、それに対して産業を民主化していく。あるいは、経済を民主化していく。このための運動を提言していこうではないか。ということが一つであります。
もう一つは、歴史教養ツアーというものを組織しまして、他の地域から、他の業種から学んでいこうと。この地域の近くですと、岩手県の葛巻というところに３０人ほど一泊で研究に行きました。素晴らしいワインが出ておりますし、そして、エコ産業が発達しておりますし、酪農、日本一林業。そこに行って、大いに身体で学ぶことができました。

近畿地区の滋賀県では江戸中期からの近江商人が三方よしと言いました。「売り手よし、買い手よし、世間よし」。要するに、商売をしている人は暴利をむさぼってはだめだと。信用が第一ですよと。そういう教えだと思いますけれども、そこから学んできました。そして、こういうシンポジウムを開いたり、あるいは、経済学者をお呼びして、いろいろと年数回にわたって、学習会をしております。
こういう組合総研ですので、できてまだ７年しか経っておりませんけれども、関西では一定の存在感を持つに至っております。

実は３月１１日、大震災が起こったとき、関西の生コン関連の業者３２７社と労働組合は集団交渉というものをやっておりました。
集団交渉と言いますのは、一つの会場に労働組合の代表が１００人くらい。そして経営者の代表も大体１００人くらい集まって、そこで交渉をするのです。賃金の問題ももちろん解決しなければいけませんが、これからの業界はどうあるべきかということを議論するわけです。そして、中小企業が大企業から収奪されているものですから、中小企業が団結して大企業と対置できるような、そういう方向を示していくわけです。こういう集団交渉をやっている最中にこの震災が発生しました。

そこで今年の春闘については一人当たり７，０００円の賃上げを獲得したんですが、この原資、年間にしますと約一人１０万円。これをそっくり被災者に対して支援しようではないかと。そういうことを決めて、現在それを実行しているところです。
われわれが受け持っているところは南三陸町です。私も何度かお邪魔させていただいています。そこに今、拠点を置いておりまして、事務所と寝泊まりできるところを確保して、専従班を配置して、そして現地から協力をいただいております。今日、松野さんという方もお出でいただいていると思いますが、そういう人たちの協力をいただきながら、継続的に支援活動を今、続けています。
これからもわれわれは支援活動を続けていきたいと思いますが、われわれの支援活動の理念・考え方の基本は対等・平等・互恵の精神で対処していくと。この基本が必要ではないかという考え方で支援活動を展開しているところです。

さて、中身の提案に入ります。まず、基本的な考え方として、「アメリカ型の日本」を変えていかねばならないということが言えます。戦後６６年間、大内先生のお話にもありましたように、大量生産・大量消費・大量廃棄というスタイル。これがわれわれの頭にすり込まれています。この方式の延長線上に戦争があるのです。
この政策の延長線上は一部の特権階級が我が世の春を謳歌し、大多数の者を格差によって踏みつけてしまうという構造です。そして、金儲けが全て。金と物が全ての価値観。
ですから原発とか発電所とか、本来放射能と人類は共存できないはずなのに、お金儲けになるとなればそれを平気でつくり出し、世に送り出す。こういうことがアメリカ型ではないかと私は思います。

本当に今度の震災は、自然災害のみならず、人災の側面が非常に強いのではないかと思います。こういったいわゆる競争社会、いわゆる市場原理主義的なやり方をあらためること。そしてこれから求められているのは、「共生・協同」でなければならないのではないかと思います。

そういう観点に立って、これからどういうことを提案したいかと言いますと、やはり、復旧・復興に対しては住んでおられるみなさんが納得できるようなものを決められていく。そして、住んでおられる方は、自治体そのものが破壊されているところもあります。そういうところは、すでに存在している漁業組合、農業協同組合、生活協同組合等々、協同組合の横のつながりをしっかりと確立して、協同組合的な力、これを背景にして、町のあり方ということを考える必要があるのではないでしょうか。

アメリカと日本の大企業はこの不幸を金儲けに利用しようとしております。絶対にそういうことを許してはならない。仕事は地元の中小企業にやるべきではないでしょうか。ピンハネをするような構造をやめさせるべきではないでしょうか。そういうことを地元の知事、市町村、これに要求していって、中小企業に仕事をよこせということが必要だと思います。
そして大企業と対等取引するシステムというものは、ほとんどの協同組合では確立されておりません。大体、大企業の従属構造に入ってしまい、大企業が協同組合に介入して、大企業に都合のよいシステムをつくるためにそれを利用しようとしております。
本来の協同組合の理念とかけ離れた、この事態を改善し、自立・自尊の精神で立ち向かっていけるようにしなければいけません。今回の状態というのはチャンスを与えられているのではないかと私は思います。

特に生コン産業というのは、産業の復旧・復興に不可欠の社会的有用産業です。
１９８０年代から開発されておりますけれども、ポーラスコンクリートというのがあります。それは、水はけがいい、水を吸収する、そして音を吸収する、そして、漁場にそれを置きますと藻が生える。そして、魚の成長に本当に有効であると言われております。それに加えて、ポーラスコンクリートは耐久性がいい。そして、経済的に低コストで済む。これが開発されておりますから、是非、街作りに活用された方がいいのではないかと思います。今、政府に対して、われわれはそのことを要請しております。

今度の原発問題というのは、事故というより事件ではないかと思います。今まで高級官僚とか、原発村にぶら下がっていた御用学者、それに政府、こういう連中は責任を取るべきではないでしょうか。
民事上の責任は当然ですけれども、刑事被告人です。この連中こそ厳しく罰するべきではないかと私は思います。マスコミはグルになっているものですから、ほとんど報道しませんけれども、「原発村」と言われているこの連中を徹底的に断罪することが必要だと思います。

それから、原発と農業の破壊、漁業の破壊、中小企業の破壊、労働者の大失業を狙うＴＰＰ。アメリカの差し金によって、これに参加しようという動きがありますが、絶対に反対すべきです。原発問題とＴＰＰ問題と基地の問題、根っこは一緒ではないかと思うのです。
つまり、日米安全保障条約というものによって、日本は軍事的にも経済的にも米国従属構造に組み込まれております。こういう状態をなくしていくには、日米安保条約を破棄して、対等・平等・互恵の平和条約を結ぶべきではないか。それが復興にとって主張されなければならない重要な点ではないかと思います。

資料に生コン産業の歴史や関西の闘いの経過を述べておりますけれども、労働組合のある産業では中小企業の場合は労使が呼吸を合わせてその産業をいかに民主的にしていくべきなのか。その産業構造を大企業の餌食からいかに守っていくべきなのか。そういう政策提言が、労使が提携してやることが重要だという風に考えています。そういう経験が４０数年間の関西の生コン労働者の経験であります。

時代状況は、まさに中小企業が求められております。あるいは、労働組合が今、求められております。なぜか？中小企業と労働組合は競争したのでは共倒れになります。ですから連帯していかなければなりません。お互いの痛みを共有しなければいけません。共生・協同の思想を共有できるのは中小企業と労働者ではないでしょうか。

今の時代が求めている。そういう置かれている立場というものを自覚して、これからの新しい日本のあり方というものをつくり上げるために、私たちは関西の地から、そして、みなさんと提携しながら、日本の国のあり方を考えていく、そういうきっかけに今日のシンポジウムをしたいと考えているところであります。