■『近畿生コン関連協同組合連合会』専務理事 増田幸伸氏にインタビュー
◇中小企業の砦=w協同会館アソシエ』と同会館内1階で開所(09年9月1日)をむかえる『グリーンコンクリート研究センター』が、中小零細企業とそこで働く労働者にとってどの様な影響を及ぼすものであるのか?を『近畿生コン関連協同組合連合会』専務理事「増田幸伸」氏に語っていただきました。
日時 8月21日 PM3時
インタビュー場所 『協同会館アソシエ』2F
インタビュアー 連帯労組機関紙部員
●インタビュアー
現在、中小企業運動の障害になっていることは?
○増田氏
元々、中小企業運動を想定するのは日本の産業構造が大企業支配になっているから。
日本では大企業・独占資本の産業支配がどの産業も行われています。
企業数から言えば圧倒的に大企業は少ないのですが、その少ない大企業が自分たちの思い通りの産業支配をしている。そうすると、中小零細企業というのは当然、取引条件などは悪い内容でしか作れない。
大企業が儲かるような仕組みにしかなっていない産業構造ですね。それを変えようというので戦後経済の民主化を図るために中小企業協同組合が出来ました。
そして協同組合法に基づいて中小零細企業が団結して対等な取引条件を作っていきましょうというのが、そもそもの中小企業運動の出発です。
●協同組合の運営というのが産業の民主化につながるわけですね。
私たちが行う中小企業運動というのは、この『協同会館アソシエ』建設もひとつの結晶だと思いますが、
アソシエ会館の建設・運営によって中小企業と協同組合や労働者の未来はどの様に展開されるのでしょうか?
○協同組合運動の一つとして、中小企業のための協同組合法に基づく中小企業の協同組合運動があります。
協同組合というのは、たとえば『生活協同組合』や、『消費者協同組合』もあれば『農業協同組合』もあるし、
様々な協同組合が世界中に沢山あります。
そういう協同組合運動というのは相互扶助の精神に基づいて営利を目的としないで事業運営をしていきましょう、ということですね。
それがまず基本にあります。
その時に大切なことは、
まず協同組合に集まる人達は弱い個人であったり、弱い中小零細企業であるわけですから、
そういう弱い立場にある人が「団結する」ということが基本ですよね。
そして相互扶助の精神でお互い助け合っていこうというのが協同組合ですから、内部でまず協同していく。
同時に、そこに集まった弱い人たちの団結で協同組合が出来て、
その協同組合間の協同、あるいは協働関係を強めることは、
地域における協同組合の横のつながりを作っていくことになり、非常に大きな中小企業運動の発展になるわけです。
しかし、今まではなかなか出来てこなかった。というのが実態なのです。
今まで、生コンならば生コンの協同組合が出来てそれだけだった。
あとのことは知りませんと、自分のところが良ければいいという、それだけだった。
しかし、協同会館アソシエが『中小企業運動の砦』と言われるゆえんは、
生コンを作る製造業の協同組合、生コン原料のセメントを輸送するバラセメント輸送の協同組合、
生コンを建物に打ち込む生コン圧送の協同組合、販売店組合などがこの協同会館アソシエに結集していることで、
これらの協働・協力関係が作れれば、それぞれの大企業であるセメントメーカーとか、ゼネコンに対して対等な取引条件を作っていくことは可能じゃないかと。
今までの単体の協同組合運動ではなく、
協同会館アソシエに結集する中小企業組合が一丸となって大企業と対抗できる運動が構築できる。
これは中小零細企業にとって大きなステップアップとなります。
●当然、中小企業にかかわらず、労働者にとっても良いことですね。
○労働者にとっても、中小零細企業に大企業との対等取引条件が確立され、
原資が確保出来れば賃金労働条件が改善していくことは当然でしょう。
同時に、それぞれの大企業が中小零細企業を一方的に押さえつけるという支配の仕組みではなく、
お互いを尊重していくという協同思想がそこで確立されるわけですから、
そこで共に働く労働者の権利もきちっと付与されていく。
だから、賃金労働条件の改善とともに労働者の権利も確保されていくという考え方が全体化していきますよ。
もうひとつは、労働運動あるいは労働者を集約していくのが労働組合ですよね。
労働組合と言ってもいろんな労働組合が日本にある。
たとえば産業別労働組合もあれば企業内労働組合もある。
企業内で自分の企業さえ良ければいいという労働組合もあれば、
産業全体を変えていかなければ個社は自立できない、あるいは対等な取引条件を持てないから賃金労働条件も悪くなり、
産業別にしなければいけないという労働組合もありますよね。
そういう産業別労働組合が大企業の産業支配に対する弱者連合として中小企業団体とタッグを組むというのは自然な流れだと思います。
●労働者の利益にもなり還元されていくものなのですね。
ある労働組合が「特定の労組との利権構造があるのではないか」という指摘をしている号外があるのですが、それについては?
○まず、今の置かれている産業構造をどうみるのか?
つまり、大企業が主導する産業支配があって、それに対抗する中小零細企業の協同組合運動があるのだ、
ということを認識するのかどうかという問題ですよ。
それらの考えに立たない労働組合がありますね。
そういう労働組合は、協同組合が事業運営をするということが良くわからない。
つまり、協同受注、協同販売をするとなれば当然、大きなお金が動きます。
お金が動くと当然、個社に還元していくわけですし、
同時に協同組合事業として品質管理であるとか、適正な賃金労働条件を確保するとか、
そういうことを協同組合事業としてきちっと目配りが出来るという事業運営に対して、よく理解していないのでは?と思う。
私たちが公正な協同組合運営をしているのに、
協同組合の運営やお金の動きにしても理解していないから自分たちの想定外だとして、
「よくわからない」という人が沢山いるのでしょう。だから的外れな批判をする人も居ますよね。
それと同時に、そういう先進的な取り組みに置いてけぼりを食うような労働組合がどこで対抗するのか?というと、
本来の労働運動とはかけ離れた、セメントメーカーの意向に適う運動をしてしまう。
今ある中小零細企業運動がセメントメーカーに対抗する運動であって労働者のためになるにもかかわらず、
一部の中小企業と一部の労働組合だけが儲かると思い込み、
「自分たちには関係がないから潰してしまえ」という考えを持ってしまう。
だからセメントメーカーと気脈を通じていくという構造になっているのではないかと思います。
そういう運動は、セメントメーカーのため、あるいはゼネコンのための労働運動になっている。
自分の置かれた位置付けが見えずに相手の手のひらに乗ってしまい、
結果的に大資本の先兵になってしまっているというのは非常に残念ですね。
●完全に大企業側、経営者側になってしまっていると。
○客観的には、大企業の利害に沿った運動しか創れないということですね。
●『グリーンコンクリート研究センター』について
○グリーンコンクリート研究センターがなぜ発足したのかというと、
まず生コン関連の中小零細企業の団体である協同組合が、
生コンも圧送もバラ輸送もそれら全てに関わる品質管理をどうするのか?
エンドユーザーに対して安全なコンクリート構造物・建造物を提供するために「安心・安全」という確信を持って貰うためにはどうすれば良いのか?と考えれば、総合的なコンクリート研究機関が必要だということからです。
我々は社会的な使命として安全・安心なコンクリート構造物を造る社会的責任がある。
だから、それを担保するための品質管理をどうしていくのか?という問題と、
社会に求められている基礎素材としての生コンクリートの可能性ですね。
今ある使い方以上のものが出来ないものかと。
これは需要創出につながるので、自分たちの仕事の拡大にもなる。ということを含めて「総合的な研究所を作っていこう」ということがそれぞれの協同組合の夢であった。
その夢が実現したのがグリーンコンクリート研究センターであるということです。
●そのためには当然それなりの資金も必要だし、当然その技術や需要は中小企業に還元されていくものであるから、
協力して下さる皆さんに出資を募るのは当然であると。
○当然ですね。
このグリーンコンクリート研究センターにスーパーアドバイザーとして進言をしてくださる二村先生はコンクリート研究の権威なわけですよ。
『日本建築学会』でもオーソリティとして存在していますし、
なおかつポンプ圧送でいえば、この間、日本で最先端の実験もしていますから、そういうところでも権威なわけです。
そういう人たちが後ろにドンと構えて、協同会館アソシエ1階のグリーンコンクリート研究センターを発進基地にして、
それぞれのゼネコンさんの研究所、それから各大学の研究所などとつながるわけです。
なおかつ、生コンでいえば、それぞれの工組の代表が集まってくる。
生コン関連の研究機関でいえばこれ以上のスタッフの陣容はないわけです。
ここまでのことを中小零細企業が為し得たということ。
つまり、ゼネコンさんもセメントメーカーも出来ないような陣容と目的を持ったこのような研究所が出来たということは、
これは画期的で歴史的なことであって、
こういう誇るべき、あるいは未来のある研究所に対して「出資を頼む」というスタンスではなく、「一緒に歩んでいこうよ」と。
当然、皆さん元々そういう夢を持っているわけですから、
同じ協働の夢を共有できる根拠があるから「出資を募って一緒にやっていこうよ」というわけです。
●バラセメントの協同輸送について。
○今回、建交労の号外に出ているバラセメントの協同輸送の問題ですが、
これはもう輸送協のパンフレットに書いてある通りですよ。
要するに輸送数量が減りました、諸経費が上がっています、という社会的経済的な客観的条件があって、
じゃあどうするのですかと。対策としてこういう事業をしますよと。
そういうことですよね。
「共同受注事業」とか「統一単価」とか「標準料金」「運賃表」を作って運営していくというのは、
生コンでも圧送の協同組合でもやっているんです。
どこの協同組合でもやっている普通の事業ですよ。
協同組合である以上は協同事業をするのが協同組合の本来の姿ですので、
「協同経済事業をしましたよ」というのを「不思議だ」という方が不思議なんですよ(笑)
本来の協同組合の姿をやって不思議がられてね、「業界を牛耳るのではないか」と言われた日には、
そうしたら生コンも協同組合は業界を牛耳るためにやっているのかと(笑)
あるいは圧送もポンプも業界を牛耳るためにやっているのかと。そんなことじゃないでしょ。
中小零細企業の為に、その権利を守っていくためにやるわけでしょう。
●あの号外は、協同組合事業、協同組合運動自体を否定してしまっているわけですね。
○そうです。
要するに、近バラ協の協同事業を批判するということは、協同組合本来の事業を、あるべき姿をまず否定していることになります。なおかつ、セメントメーカーによる産業支配を肯定することになるわけです。2重の意味があるのです。
●協同組合事業を否定することは結果的にメーカー支配を肯定することになると分かっているのでしょうか?
○構造は分かっていると思う。分かってやっているのでしょうね。だからどっちを取るのかということですよ。
●分かってやっているとしたら、完全に「メーカー側」ということですか。
○「メーカー側」というのは、メーカーと中小企業運動・労働組合運動と対抗したときにどちらにつくのかということ。
現在、中小零細企業運動とか労働運動が産業支配に対抗するとなると、いろんな問題が発生しますよね。
たとえば、不買運動とか労働組合運動の抗議行動の問題などが発生しますよね。
そうすると社会的にメーカーや独占が悪いのにも関わらず、
あたかも労働運動が悪い、中小企業運動が悪いという報道のされ方とか認識のされ方とかをすると、
そういうときに建交労がどういう立場をとるのかといえば、
社会的に多勢の方に付くというのか、今の常識につく。
建交労がいつも言っているのは、「社会的に認められた」という言い方をするわけですね。
じゃあ社会的に許された範囲というのは何なのかという話をするときに、
彼らは「常識にしたがって」という。そうしたら今のジャーナリズムを含めて、いろんな問題が発生しますよね。えん罪事件を含めて。そっち側につくと公言しているわけですよね。
●この号外のまとめには「憲法を活かす」と書いてあります。
○ここでも、建交労の運動は憲法を活かすのが基本的な労働運動の本来の姿だと言っているわけですよね。
「憲法を活かす」ということは、憲法の基本というのは何なのかと、よく考えなければならないですよ。
各個人、人間の権利、基本的人権を守るということが憲法の基本なんですよ。
それは、国家の権力に対しても、あらゆるものに対しても基本的人権を守っていくのが憲法の命なんですよ。
そうすると、その個人の権利、働く権利であるとか、
適正に生活できる権利というのはどこで担保されているかといえば、
憲法で自動的に保障されているのではなく、それは不断の闘いにあるわけです。
運動こそが憲法の命なんだということがちゃんと日本国憲法の中に書いてあるわけです。
「棚からぼた餅」的なものではなく、
「闘いとる」ということが「憲法を守っていく闘いである」ということが建交労にはわかっていない。
だから多勢に付いた方が良いという考え方から脱せずに、自ら汗をかいて事態を切り開こうとはしない。
だからセメントメーカーと一体化したような見解しか出てこない。
だから思想的な退廃だと僕は思いますね。
それで、基本はね、主は何か従は何なのかという話ですよ。そうしたら、セメントメーカーの、あるいはゼネコンの産業支配。
これがメインなんですよ。
建交労というのは、それの手先になっているだけなので、ここが我々は主な対象だとは思っていない。
こういう低レベルの号外を出したところで建交労を主敵にする必要は一切ない。
あくまでもセメントメーカーという産業支配の影が消えたら、この建交労の運動も自動的に消えると思いますよ。
●ありがとうございました。
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