斉藤建材事件 −高裁の逆転有罪判決を弾劾する−
主任弁護人 里見和夫
大阪地裁は、傷害事件について、被害者の目撃証言には信用できない部分があるとして、Mさんに無罪の判決を言渡しました。
ところが大阪高裁は、最初から検察官の控訴を認容しようとする姿勢を露骨に示し、高裁での被害者の尋問を非公開で行おうとするなどしたため、弁護団としばしば衝突しました。
弁護団は、非公開裁判を許さず、公開の法廷で被害者の証人尋問を実施させ(被害者は一審より一層あいまいな証言をしただけです)、被害者の証言が客観的状況や他の会社従業員の供述とも合致していない点を詳細に指摘し、YさんやMさんには、無罪判決以外あり得ないことを主張しましたが、高裁は、何ら合理的理由を示さないまま、被害者の証言は信用できるとの結論のみを繰り 返して、Yさんの有罪を維持し、Mさんにも逆転有罪の判決を言渡しました。
一審では公訴棄却の判決を受けていたビデオカメラの窃盗事件のNさんに対しても、高裁は、傷害事件と同様、合理的根拠を示さないまま、逆転有罪判決を言渡しています。
これらの高裁判決に共通して言えるのは、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の基本原則すら無視しているということです。高裁判決は、極めて政治的な意図を持って言渡された不当な有罪判決と言わねばなりません。
高裁は、バイクの窃盗事件のWさんに対して、罪亡ぼしのつもりか、変な理屈を並べて無罪の判決を言渡しましたが、もともと事件にならないものを警察が事件化したにすぎませんから、何ら評価に値しません。
斉藤建材事件は、その原因となった斉藤建材との労使紛争については、関生支部の全面的勝利と言ってよい内容の協定が会社との間に成立し、また、傷害事件および窃盗事件の被害者は全員、刑事告訴を取消していますから、既に運動においては、関生支部側は全面的に勝利しています。
この勝利に対する警察・検察・裁判所が一体となった巻返しを許さないため、より警戒を強めつつ、運動の一層の拡大・強化をはかっていくことが求められています。
以 上
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