生コン支部機関紙「くさり」NO.744 4月号(4/10発行)1面より   >>くさりTOPへ
「11春闘最前線」 賃上げ7千円/一時金底上
3月11日、日本記録史上最大級(M9.0)の地震が発生し、大津波による甚大な被害を東日本に与えた。政策協議会は早々に「11春闘で賃上げを勝ち取り、すべて義援金に」と決定、大阪兵庫生コン経営者会との交渉で年間10万円相当の賃上げを勝ち取り、経済要求を妥結した。
 

昨年の政策運動で中小企業と労働者が得た成果をくつがえそうと、ゼネコン、セメントメーカーは数々の策を弄している。大阪兵庫生コン経営者会事務員引きあげや会員社脱退の動きはその一端であり、11春闘集団交渉を潰そうと目論んだものだ。しかし実際には今春、9事業者団体(3百社以上)が参加する例年以上の大規模な集団交渉が行われ、業界への影響はさらに拡大。政策協議会(3労組)と圧送労組は昨年同様、今春闘を〝政策春闘〟と位置付け計4回の共同交渉を行うと共に、各地域・産業ごとの集団交渉を展開した。

9事業者団体関連3百社以上との〝政策春闘〟を展開

3月30日に行われた経営者会との第2回集団交渉で労使は「賃上げ7千円(年間10万円相当)。一時金昨年実績(低水準の他労組移行組は100万円目安に底上)」で妥結(制度・政策要求他は委員会を設置して協議)。翌31日の第4回集団交渉で各地区・各協組の政策方針と集団交渉の進捗が確認されたことから、9事業者団体の11春闘集団交渉を終結した(地域交渉は継続)。
今春闘は昨年来のゼネコン、セメントメーカーの策略が影響を及ぼし、従来通りの集団交渉開催を危ぶむ声が一部にあった。しかし、フタを開けてみれば政策協議会は過去最大級の春闘交渉を展開。参加事業者団体は近畿一円9団体(3百社以上)に及び、製造のみならず輸送、圧送、バラ輸送などの生コン関連協同組合が一堂に会して政策協議を行うという、近畿生コン関連産業の命運を左右する一大交渉となった。


<9団体が集交に結集/意識を共有し一体化>
政策協議会は昨年までの産業ごとの集団交渉を並行して行いつつ、さらに各地域の協同組合との集団交渉も行いながら9団体の集団交渉を開催。この新方法により、近畿一円の事業者団体が個別で労組と政策協議を行いながら、集団交渉で業界の問題点や産業全体の危機意識を共有することが出来た。
また、奈良、和歌山、阪神協などの労使関係や協組運営が安定した地域の政策報告にじかに触れることで、手本となるべき〝中小企業が共に生きるための協組運営〟への意識を高めることが出来たのではないだろうか。

<運動に邁進した成果/方針の正しさ示す>
11集団交渉で各協同組合間、地域状況についての正確な情報が共有でき、近畿にひとつの団結体が出来上がった。統一した力を高め、大企業との対等取引条件が前進し、今後の政策運動に明るい展望を切り開く春闘が展開された。これらは時代状況を読み取った政策協議会の方針の正しさと組合員が運動に邁進した成果を示すものである。以下、日を追いながら集団交渉の模様と業界の動きを報告する。

<〝集交潰し〟を狙った/経営者会崩し策動>
大阪兵庫生コン経営者会では、昨年来よりのゼネコン、セメントメーカーの策動に乗せられた一部の会員社が脱会の意志を表明。さらにメーカーは2月初め、直系工場から出向していた経営者会事務局職員を一斉に引きあげさせ、事務機能を麻痺させようとした。
大企業は分断分裂の手法を使い、経営者会を崩壊させて〝集団交渉〟を潰そうと目論んだのである。ちなみに関西生コン関連他2労組の今春闘では、従来の集団交渉という呼び方を辞めて〝集合交渉〟と呼んでいる。
経営者会は政策協議会と連携して迅速な対応を図り、事務機能を回復させた。そして脱会意志表明社に対する説得に尽力を注いだ。
経営者会加盟社は労働側との春闘合意事項を履行する義務がある。たとえ脱会しても会に所属していた時期の合意事項は履行しなければならない。
脱会して個社で「値上げ」「出荷ベース」「ブロック対応金廃止」など過去の履行義務が果たせないのは明らかだ。春闘集団交渉での合意は産業全体の統制の中で業界を立て直す内容の協定であるため、集団的な労使関係のもとでなければ履行できないものが多い。
一方、政策協議会は脱会意志表明13社と3月3日、労使懇談会を行い、昨年までの春闘で合意した協定履行の責任を追及。「脱会しても履行出来る方法」の合理的説明を求めた。
現在(3月末)、7社が経営者会に復帰している。


セメント値上げは生コン適正価格収受まで断固阻止

<3月8日 9団体・第1回集団交渉>
セメントの国内販売量はピーク時91年度の8470万㌧から、10年度の4116万㌧に(前年比5.4%減)。この状況の下でセメント各社は4月1日出荷分から㌧当たり1千円以上の大幅な値上げを表明した。
アフリカ諸国の政情不安もあり原油等のエネルギーコストが上昇しているこの時期、セメント各社もなりふり構わぬ利益確保に動き出している。しかし、この値上げを素直に認めることは中小企業にとっては死活問題。セメント各社は生コンの適正価格が浸透し、大多数を占める中小企業に収受されるまで値上げを保留すべきである。
政策協議会は自らの団結力と中小企業との連携の強化を図り、労使一体となって独占資本との対決に取り組むことをテーマに11春闘に突入。3月8日、生コン産業政策協議会(生コン産労、全港湾、連帯労組)と近畿コンクリート圧送労働組合は、近畿生コン関連事業者9団体(大阪兵庫生コン経営者会、京都協、奈良協、和歌山連合会、北神協、阪神協、輸送協、近バラ協、近圧協)との2011年第1回集団交渉を協同会館アソシエで行った。
この日の目的は、生コン関連業種の実情を分析し、業界の進むべき道について議論すること。そのことを通じて中小企業と労働者の経済的・社会的地位向上を目指すことである。労働側は大企業との対等取引を目指す運動を強固にし、経営方針を個社型から共生協働型に転換することなどを提起。次交渉で各協組から地域の現状と課題報告が行われることを確認して終了した。(2面に続く)


(2面)
大地震と津波が東日本を襲う

3月13日 自動車パレード開催/生コン支部は就労2時間分以上のカンパ>
3月11日14時46分頃、太平洋三陸沖を震源としてM9.0の地震が発生。その揺れは執行委員会中の生コン会館でも確認された。
この『東北地方太平洋沖地震』によってもたらされた甚大なる災害を、日本政府は『東日本大震災』と命名。時間が経つにつれ、津波被害の大きさと被災した東京電力福島第1原発の事故の深刻さが関西にも伝わり、東北・関東の仲間の安否が気遣われた。
2日後に迫った恒例『自動車パレード』の開催を危惧したが、政策協議会は「こんな時だからこそ盛大に行ってカンパを決議し、広く市民に被災地への支援を訴える」と決断。この意気は後に〝賃上げ全額を被災地への義援金にする〟という大英断につながった。
3月13日、交運労協セメント生コン部会と生コン産業政策協議会および近畿コンクリート圧送労働組合、アソシエ職員組合は〝被災地支援と、大企業との対等取引を進め、賃金・運賃の大幅引き上げを獲得し、中小労働運動を前進させる〟『3・13自動車パレード』を粛々と、しかし盛大に行った。
決起集会会場の海遊館臨時駐車場には、早朝からミキサー・バラ・ポンプ車など280台の車輌と労働5団体の仲間と家族、各界来賓ら約7百人が結集。集会前に犠牲となった方々に黙とうを捧げた後、被災地への義援金支援を呼びかけた。
各労組代表は「業界の安定こそが雇用の安定につながる」「団結力と行動力で大幅賃上げと諸要求を勝ち取る」など、今春闘にのぞむ強い意志を表明した。連帯労組を代表した武委員長はまず被災者へ哀悼の意を表明。そして「一昨日の地震で原発の危険性を我々は再確認しました。このようなものは即時廃棄するべきです。復興事業で建設及びセメントの需要が相当数考えられますが、この震災を千載一遇の好機と考えるゼネコンやセメントメーカーの企み(値上げや荒稼ぎ)を断固として阻止しなければいけません。今年も政策春闘で大企業の収奪と横暴を規制し、中小企業の経営環境を良くする。そして大幅賃上げも実現する。昨年以上に闘いに立ち上がる第一歩が今日の行動です」と11春闘での果敢な闘いを呼びかけた。(3・13自動車パレード動画)(パレード写真集/近畿地本サイト

<3月15日 9団体・第2回集団交渉>
3月15日の第2回集団交渉では、各協同組合の課題や地域の現状を報告し、それぞれの抱える問題を共有した。
現状・課題報告で奈良協組は、個社型から協同組合型経営へ着手していることを報告。内容はシェア配分方式から利益配分方式への転換や共同輸送共同購買等の実施という、全国協同組合初の取り組みというべきもの。
阪神協は値段ではなく、付加価値で地域内新協組の発足に対応すると報告。「一方的なセメント値上げを認めない」「総合輸送体制を目指す」など5項目を発表した。
以降、〝安定した協同組合運営・中小企業経営〟に向けての政策方針が各地で議論され、第3回集団交渉でその内容が報告されることとなった。(3面に続く)


(3面)
<3月23日 経営者会・第1回集団交渉>
3月23日、大阪兵庫生コン経営者会との11春闘第1回集団交渉が行われた。
冒頭、有山泰功経営者会会長から会長職を辞任したい旨の発表があり、「後任人事の推薦を早急に行う。今後の窓口を門田副会長、藤中常務理事に託す」との報告があった。
交渉で労働側は脱会社問題にふれ、生コン値上げ、ブロック対応金廃止のほか、輸送やバラ運賃値上げの解決も含んで、今まで合意した約束事項があること。個別で出来ないことが分かっているのに脱会するのは約束を履行しない不当労働行為だと追及。
これに対し経営者会は、今後も脱会社の復帰を求めていくことを明言。そして昨年の総括を報告した後、経済要求について「広域協価格が低下し、出荷も望めない現状では福利資金含めて答えることは出来ない」とした。
労働側は①誰が苦しい現状を作ったのか②「廃止する」と約束したブロック対応金が復活し、地区により8百円から2千円も取られている事実③広域協幹部を背任などで強く問い詰めたのか④やるべきことをやらずして、悪い結果の責任を労働者に押しつけるやり方は到底容認できない。などを問い、次回交渉での誠実回答を要求した。

<3月25日 9団体・第3回集団交渉>
3月25日、この日の交渉は各協組が地域で行った政策議論を報告することに加え、春闘要求の回答指定日とされていた。
まず大阪兵庫生コン経営者会が、生コン価格を値上げして〝量から質〟の転換を図り広域協再建を目指したが、広域協の方針が二転三転して(「販売育成金」と呼び名を変え、廃止決議したはずのブロック対応金の徴収等)運営不安がつのり値上げ完全実施に至らなかったこと。間違った人事で間違った営業施策を打ち出したこと。このままでは「直系社だけが生き残り、専業者は潰れていく」と組合員企業はさらに不安をつのらせていること。などが報告された。さらに、これらを打破するために業界のトップが出席する会合を提案し、上記の問題点を改め、周辺協組と共に有効な策を打ち出す要請をする文書を広域協・安田理事長に提出したことなどを報告。
輸送協からは、各生コン工場、協組に対して燃料サーチャージ制導入の要請をしていること。運賃については広域協、神戸協傘下の生コン工場に値上げ分の請求書の浸透を図っていることなどが報告された。
近バラ協は、販売店対策、第二近バラ対策、アウト対策、イン内アウト対策の限界を共同事業の阻害要因として挙げた。経済要求は昨年実績プラスαとの回答。
近畿圧送経営者会は、別途料金収受、共注共販事業の推進、最低賃金制度の出発などの課題を政策展望として語るべきとしながら、経済要求に対しては「有額回答を目指す」と報告した。
各協組共通の課題は需要が激減する中での〝質への転換〟やアウト、越境対策である。引き続き各地域・産業の集団交渉を進めていくことを確認して最終回答は次回交渉へと持ち越された。

<3月30日 経営者会・第2回集団交渉>
3月30日、大阪兵庫生コン経営者会との11春闘第2回集団交渉が行われた。今回の集団交渉の席には、脱会を表明していた7社が復帰した。
1面で報告した通り、『賃上げ年間10万円相当(月額7千円)』『一時金昨年実績(低レベル他労組移行者は百万円へ底上)』で合意。その他の制度要求は委員会を設置して引き続き協議することで妥結した。
政策協議会は賃上げ分を全額被災地の義援金にすると内外に発表。また、近畿コンクリート圧送労組も夏・冬一時金一人あたり3万円のカンパ拠出を決めた。

<「販売育成金」は無効/裁判所認め仮差押へ>
この日、経営者会から広域協の資産が仮差し押さえされたことが報告された。
広域協組値引き販売の温床「ブロック対応金」は09年3月の同協組理事会で09年4月1日から廃止することが決議された。にもかかわらず、以後も組合員企業から「ブロック対応金」を徴収し続け、昨年にも「廃止する」と理事会で決議されたが数カ月後に「販売育成金」という名目で復活。この「販売育成金」の徴収は理事会で議題に上っておらず、決議もなされていない。
この広域協執行部の行為に対して、組合員企業T社が大阪地方裁判所に本年3月25日、徴収金を債権とする『仮差押命令申立』を行った。3日後の28日、大阪地裁から「仮差押決定」命令が下った。

<広域協を訴える構え/同様の申立計17社が>
政策協議会はT社以外にも、さらに16社が同様の申し入れを広域協に行うことを確認している。


セメント値上げ交渉は各協組・経営者会で一括

<3月31日 9団体・第4回集団交渉>
3月31日、この日の交渉は各協組が地域で行った政策議論を具体化する方針の発表に加え、春闘要求の最終回答指定日とされていた。
まず、大阪兵庫生コン経営者会から昨日の妥結内容と会の新人事(新会長・小田要氏)が、さらにセメント値上げ交渉の窓口を近畿生コン各協組及び経営者会で一括することが報告された。各協組からも奈良、和歌山の例を参考に労使関係安定に向けた政策が報告された。運営方針については奈良協報告の「個社型から協組型」「輸送共同事業」などや、近畿生コン関連協組連合会発表の「燃料サーチャージ制」「共注・共販事業の推進」などが各協組の参考になった。
今後、各地域での政策議論を引き続き行いながら、近畿全域で安定した労使関係構築に全力を尽くすことを確認して、11政策春闘集団交渉は終了した。
武委員長は「9団体3百社以上との集団交渉は成功した。影響は近畿一円に拡大し、関連業界は一体となって大企業との対等取引を目指す基盤が今春闘で作られた。成果を確信にして社会的存在感のある運動への誇りを組合員は持ち、その意義を理解して日本労働運動の再生に生かしてほしい」と中間総括を行っている。

<社会資本政策研究会は需要喚起のため政府へ>
社会資本政策研究会は交渉参加団体と共に政府機関へコンクリート需要喚起の申し入れを行う。

(くさり2011年4月号より)


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