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要 宏輝のコラム

見出し

 4月号から6月号まで3回に分けて、協同組合と「関生型運動」について掲載します(機関紙部)。

 
 キ.「真の協同組合」へ法的整備
  
  日本の各種協同組合法における目的と事業について。各種協同組合はそれぞれがその根拠法(特別法)を持っているが、日本の場合、産業政策として立法化されたものである。営利法人は会社法によって、非営利法人は一般社団・財団法によって規制されているが、協同組合に関しては個別的な各種協同組合法しか存在せず、全体を規制する法律がないところに重大な問題、法人制度の重大な欠陥を抱えている。国際協同組合同盟(ICA)が定めた「協同組合のアイデンティティ定義・価値・原則」が各種協同組合法に批准されていない。協同組合に属する組合員企業を「個別経済体」とみるか、「共同経済社会」とみるか、その二面性を引きずったままである。後者の方が企業の社会性を重視し、賃金・報酬・配当・税金などの適正支払いを行う、「理想形」である。

 現在、①各種協同組合法の見直し、②「協同労働の協同組合法」の新設、③協同組合基本法(統一法または一般法)の成立といった課題が提起されている。とりわけ②「協同労働の協同組合法(労働者協同組合または生産協同組合とも呼ばれる)」は超党派の議員立法として準備され今年中に成立する可能性がある(その法制化運動の推進者であり、筆者の古い友人でもある津田直則桃山学院大学名誉教授の話し:注5)。これらが実現すれば、個別の協同組合の実践の前進、各種協同組合間の連携などに資することになり、連帯社会・協同社会(アソシエーション)のすそ野が広がる。

 ク.協同組合とアソシエーション

 アソシエーションとは、共同の目的を実現するために力や財を結合する形で、「社会を生産する行為」を、またそのように生産された社会を意味する。20世紀の私利追求の害悪、公権力体制の根本欠陥に学び、「私」でもなく「公」でもなく、人々が自治的に「協」の実践を追及する道である。各種のNPO(非営利組織)・NGO(非政府組織)、生活者原理と自治を掲げる協同組合、そして地域密着型の組織として力を持った労働組合・ユニオン、外国人を含む参加型の政治を実現しようとする自治体などが、アソシエ―ション・グループである。・・・以上は「アソシエーションとは何か」を分り易く(?)要約したエッセンスである(田畑稔「マルクスとアソシエーション」)。

 アソシエーションの源流をさかのぼる。19世紀の、オーウェン、フーリエ、フランスの「自由派社会主義者」、プルードン、第一インター(フランス支部)とつながる〈マルクス派ではない、分権・自治の社会主義の流れ〉につながる組合運動で、現在のヨーロッパ社会民主主義にこの流れが引き継がれている。根本は、生産者(労働者)が自主的に助け合い協同する組織(アソシエーション)をもち、その組織の拡大強化から連続的・漸進的に新しい社会をつくっていくという思想である。組合主義であり、「前衛政党」を嫌う。「戦争の世紀」といわれる20世紀の時代背景、「ロシアの労働者は半野蛮人」(革命当時、社会主義をつくりだすために必要な知識・教育を持っていなかった)という事情のなかで、力をもった強権派マルクス主義(ボルシェビキなど)に弾圧・粛清されたが、21世紀ではこの流れの方が時代に合い、相互扶助を軸に社会改革のために闘っていくという思想が再評価され、勢いをもってきている。

 こうも言うことができる。左翼の運動方針は、国家権力を奪ってからでないと社会改革はできないという、ソ連型の方針または類似の方針から脱却できていない。労働組合運動や政党の組織力に代わって、新しい社会運動といわれる運動が影響力を増してきている。この、新しい社会運動は「権力奪取」の前から「いま・ここ」で社会変革を実現していくという意思をもって展開されている。商品生産や流通を媒介としない利殖の仕組みを広げ、搾取=剰余価値の領域を蚕食していく。

 筆者がアソシエーション、とりわけ生産協同組合に接近したのは、倒産の嵐(1975~80年代)の時代、そして工場占拠・自主生産・労働者管理の闘いと重なる。いわゆる工場占拠を続けながら、倒産整理手続きに抗し、未踏の闘争を展開していた。「会社はつぶせても組合はつぶせない」確信が、「ならば、組合が会社を自主管理する」レベルの闘い、つまり労働・所有・経営参加の生産協同組合へと導いた。イタリアやフランスのように協同組合の先進国であったならば、闘いはもっと飛躍、拡大していただろう。

 

 ケ.協同組合の民主的管理の原則:理事(経営管理人)は、法令遵守の人格者

 「真の協同組合」とは、参加と民主主義を重視する。協同組合が株式会社とちがうのは、第一に「人間の連合」であること。資本よりも人間を大切に考え、一人一票の民主主義を重視し、組合員の参加により民主主義を実体あるものに近づける。新「協同組合原則」(1966年)は民主的管理の内容をくどいほど、経営を管理する人(理事)は民主的に選ばれ、社会的使命感を持ち、組合員の声を聞き代表し、社会的責任を第一義的に負う人でなければならないと強調している(理事の法的義務:注6)。現在の大阪広域協組の一部理事の常軌を逸した所業をみるにつけ、協同組合を名乗りながらも実態は「同業団体」のレベルだ。彼らは独禁法に守られながら、その内部運営では差別的な出荷割り付けを行い、果ては①骨材等の流通、②セメントの輸送、③セメントの販売の三つの「私的独占」を画策している。法令遵守を屁(へ)とも思わず、労働組合に支配介入(不当労働行為)し、違法・不法行為をほしいままにしている。悲しいかな、公人(理事)としての自覚・品性がない(詳しくは連帯広報委員会の広報や「広域協組に対する6項目提言」(注7)など連帯HPに搭載)。遅かれ早かれ、所管行政からの指導・制裁を招き、公共事業からの排除、社会的にも断罪されるだろう。連帯・関生は、「我々は、四人組やヤクザ・チンピラに支配される協同組合に断固反対し、正常な業界作りを目指します!」(2018・3・30連帯ブログ)と反転攻勢を強めている。


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 コ.現代資本主義下、協同組合の歩む道:情報は民主主義の貨幣
 

 資本主義国の協同組合のたどる道は、独占資本との闘争と隷属の二つが存在する。漸次(ぜんじ)隷属の道をたどると懸念された代表例として日本の農業協同組合(JA)があげられていた。二つの道の一つは、協同組合における大衆の影響を強め、進歩的な指導を強め、独占に対する闘いを活発化し、社会主義をめざす階級政党の闘いを支持する道(筆者注:関生のたどったのはこれに近い道)。もう一つは、技術的方策にたよる大規模化と集中化の道(筆者注:これは大阪広域協組のたどろうとしている道)で、より有効な条件で独占と闘えるようになる積極面をもつ反面、不可避的に協同組合の一層のブルジョア化のリスクを持つ。相互扶助原則や最大限利潤の原則の逸脱だけでなく、国家とのつながりを強めて協同組合の理念や利益を決定的に損(そこ)なう(富田順一「労働者協同組合 その思想と運動」p114~『階級的協同組合論』)。

 最後に、協同社会の「将来像」と道程(道のり)。前述の法制度整備と並行し、労働者(生産者)が労働組合と協同組合を連携させ、社会システムに張りめぐらされた「権力のネットワーク」をいたるところから、弱め、掘り崩し、変質させること。人間にとって、権力もその支配も要(い)らない。要るのは情報権・協議権・参加権である(代議制に立つ古い民主主義?協同的学習に立つ新しい民主主義)。そのためにはすべての情報がすべての人に共有されなければならない(人民のための情報革命)。それによってすべての人・地域・国の多様性・公平性・自治・協同に立つ正しいグローバリゼーションが進められる。
の地位から得た事業上の秘密を利用して、組合の犠牲において私利をはかることは避けなければならない(競業避止義務)/④理事と組合との取引の制限(自己取引、利益相反取引の制限)

 

(注5)日本における、株式会社などの「雇用労働」から「協同労働」という労働形態に転換する労働者協同組合法の法制化運動の歴史は、津田直則「連帯と共生―新たな文明への挑戦」p277~第4節「非営利セクターの仕組みづくり運動」に詳述されている。

(注6)理事の法的義務:①善良なる管理者の注意をもってその職務を行う(善管注意義務)/②法令、定款・規約、総会・理事会決議等を遵守し、組合のために忠実に職務を遂行する(忠実義務)/③理事がその地位から得た事業上の秘密を利用して、組合の犠牲において私利をはかることは避けなければならない(競業避止義務)/④理事と組合との取引の制限(自己取引、利益相反取引の制限)

(注7)「6項目提言」とは、①労働組合と良好な協力関係築く。②協同組合の品位を汚さない。③理事職は公人職であり、私的利益は慎む。④生コン経営者会への全社加入。⑤労使の協力関係を内外に公表する。⑥ミキサー・セメント輸送運賃引き上げるなど6点にわたる課題・提言です。
 これら6つの課題は、協同組合が健全に発展するため必要不可欠なものです。現在、広域協組は、大阪府下では99%という独裁体制です。したがって優越的地位の乱用をあらため、社会的義務として6項目提言を謙虚に実行するときなのです(連帯広報委員会:http://rentai-union.net/page/2参照)。


【 くさり5月号より 】

 
 筆者プロフィール
 
  要 宏輝  かなめ ひろあき
 
 1944年香川県に生まれる。
<運動歴>1967年総評全国金属労働組合大阪地方本部書記局に入局/1989年産別合併(第一次)で全国金属機械労働組合になり、1991年に同大阪地方本部書記長/1999年産別合併(第二次)でJAM大阪副委員長、連合大阪専従副会長/2005年定年後、連合大阪なんでも相談センター相談員/2009年1月連合大阪訴訟(大阪府労働委員会労働者委員再任妨害、パナソニック偽装請負批判論文弾圧、「正義の労働運動ふたたび」出版妨害、不当労働行為企業モリタへの連合大阪会長謝罪事件の四件の人格権侵害等訴訟)/2009年5月和歌山労働局総合労働相談員
<公職等>1993~2003年大阪地方最賃審議会委員/1999~2008年大阪府労働委員会労働者委員
<著書>「倒産労働運動―大失業時代の生き方、闘い方」(編著、柘植書房、1987年)/「大阪社会労働運動史第六巻」(共著、有斐閣、1996年)/「正義の労働運動ふたたび 労働運動要論」(単著、アットワークス、2007年)/「ワークフェア―排除から包摂へ?」(共著、法律文化社、2007年)など
<最新の論文等>「連合よ、正しく強かれ」(現代の理論2009年春号)/「組合攻撃したものの法的には負けっぱなしの橋下市長」(週刊金曜日2015.2.6号)/「結成28年で岐路に立つ『連合』」(週刊金曜日2017.8.25号)など

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