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要 宏輝のコラム

見出し

 4月号から6月号まで3回に分けて、協同組合と「関生型運動」について掲載します(機関紙部)。

 
ア.独占禁止法と協同組合: 「共同して経済を営む」実践は十分か? 

 独占禁止法(独禁法)の歴史的意義は、19世紀の経済的自由の弊害を克服し、20世紀の経済的公正を実現するところにあった。「経済的公正」と「独占禁止」の二つ、あるいは一つを憲法で規定している国は多い。さらに三つ目の「協同組合の保護育成」を、憲法上明記されている国は51か国にのぼる。日本は三つとも憲法に書き込まれていないが、お隣の韓国は三つとも憲法に書き込まれており、実践も先行している(「ソウル協同組合都市構想」:津田直則「連帯と共生―新たな文明への挑戦」p98~)。

 独禁法の目的は経済的公正の実現として協同組合の目的に合致し、協同組合はその担い手的役割によって、独禁法の適用除外となっているのである。協同組合の独禁法適用除外の根拠は、大手独占に対する対抗力論だけではなく経済的公正論で説明することが妥当性を持つ。

 独禁法の適用除外(22条:※注3):中協法に限らず、協同組合の最大のメリットは相互扶助を目的とした共同事業に対する独禁法の適用除外だ。松本光宣大阪広域協組初代理事長の至言を借りれば、肉食獣のライオン(ゼネコン)やトラ(セメント)に囲まれた草食動物シマウマ(小規模の生コン業者)を保護し、群れ(協同組合)を作り、「共同仕入れ」「共同販売」の価格カルテルを適法化していることだ。

 現在の大阪広域生コン協組の一部執行部の「組合攻撃」等の所業は、業界の団結組織である経営者会や協同組合を分裂させ、組織を自分からぶち壊す愚行というほかない。自分から進んでトラやライオンの餌食になるようなものだ。

 しかし、20世紀後半から今日に至る、新自由主義の経済政策によって経済的公正はむしろ後退・悪化させられた。いわゆる「市場の失敗」(市場の調整メカニズムが機能しないこと)が起こった結果、規制緩和の弊害による労働・雇用条件の悪化が生じている。  

 さらに富める者と貧しい者、都会と地方といった格差を助長し、時には対立さえ生んでいる。いわゆる「結果の平等」ではなく「機会の平等」を重視する新自由主義の経済政策がこうした状況を生み出している。規制緩和し、能力のあるものが富を蓄積すれば、自然とその恩恵が広く行き渡るとされる、いわゆる「トリクルダウン」は実現しなかった。富の偏在があっても総体としてそれが最大化していればよいのであって、「分配」の問題はほとんど考慮されることはなかった。
要するに、アベノミクスを含めて新自由主義の考えは、協同組合の理念とは相いれない事態を拡大させた。

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カ.鼎立(ていりつ)する労働組合・経営者会・協同組合の「産業民主化共闘」:関生型運動の神髄
 

 (1)労働は商品ではない:1944年、国際労働機関(ILO)のフィラデルフィア宣言において確認された原則である。以来74余年が経過したが、最近、あらためてこの原則に注目が集まっている。それは、「労働」があたかも「商品」であるかのように、商取引の対象となり、使い捨てられ、買い叩かれ、摩滅させられている現実があるからである。
 人が働くということを、単純に労働力の供給、労働力の売買とみなさない。会社のなかで、働きによって賃金に格差が生まれてくることがあるが、その格差はあまり大きなものにすべきでない。連帯によって協同組合が重視する公正な給与の格差の範囲は、例えばモンドラゴン協同組合では「連帯賃金」とも呼ばれ、最低と最高の格差は最大三倍(アメリカは約500倍)。広域協組の理事長の報酬と生コン労働者の格差は何倍か?


 (2)筆者は、この「労働は商品ではない」という言葉をILOと違った趣旨で意図的に使ってきた。「商品」でないということは、「これ以上安い値段で働かない(労働力を売らない)」という賃金カルテルを結んでも独禁法の対象にはならない(適用除外)ということである。総評全国金属の産業別統一闘争は、《統一要求➡統一闘争➡統一妥結》の貫徹
だった。これを、総評時代から今日まで継続して闘っているのが関生つまり関生型運動だ。協同組合関係の経営者会との「集団交渉」を軸に産業別統一闘争を展開している。
 そこで合意された賃金をはじめとする労働条件は、生コン製造・輸送・バラセメント輸送、生コン圧送の三業種に適用され、日々雇用や出入り輸送業者の運賃にも伝播(でんぱ)する。これが生コンの原価構成に組み込まれ販売価格に反映される。生コンの共販価格(カルテル)は賃金カルテルを基礎にした二層構造になっている。
 とりわけ、「座して死を待つのか、立って闘うのか」という、業界の構造問題(3900工場の3分1、1200工場の廃棄)に見舞われた2010年、7月2日からの139日間の統一ストは圧巻だった。大阪駅の北ヤードの大規模開発を完全にストップさせ、ついにゼネコンを屈服させた。需要が大きく減退する中での生コン価格の適正化を求めた、関生型運動の金字塔のような闘いだった。

 (3)また、世間の賃金の決め方とは趣を異にする。世間一般の賃上げや一時金は、①株主への配当、②内部留保、③役員報酬が優先され、そして剰余利益が出たら、その「おこぼれ」にあずかるといった手順だ。順序が真逆だが、関生と経営者会の交渉・合意手続きの方が適法で理にかなっている。適法とは、下請中小企業振興法に「下請振興基準」(第4項、※注4)で、取引対価の決定は市価の動向等の要素を考慮した合理的な算定方法に基づき、下請中小企業の適正な利益を含み、労働条件の改善が可能となるよう協議決定(合意)する、となっている。
 しかし法で明文化されていてもそれを現実化するためには労働組合の力がいる。それは、労働法と職場の力関係と同じ原理だ。建設業界では、ゼネコン(ライオン)の「総価請負方式」(設計・施工一式請負)が諸悪の根源で、材料費(セメント・メーカー=トラ)が労務費より強い力関係で対等交渉するには産業別の労働組合の交渉力(闘争力)しかない。公務員以上に法的に守られているのが電力会社の高賃金で、「総括原価方式」(電力事業法)によって、電気料金のなかに原発コストと一緒に自動的に組み込まれている。


 (4)生コン等の原価構成に組み込まれたカルテル賃金に引き寄せて、筆者はヒトラー、ナチスの行った公共事業のことを思い出す。「弱者救済」と「ナショナリズム」がテーマだったナチス(国家社会主義労働者党)は、1933年、失業対策としてアウトバーン(片側三車線の基幹高速道路)の建設費の46%が労働者の賃金に充てられた。労働者の賃金から決められ逆算して予算が組まれた。「ドイツ労働戦線」という組合が企業を監視していたためピンハネが許されなかった(武田知弘「ヒトラーの経済政策」p377)。労働者の賃金が多くなるということは、経済学的にも景気対策としては「正しいこと」なのだ。ケインズ主義の実践そのものだから、当時、ケインズは絶賛している。
 日本の公共事業とヒトラーの行った公共事業はどう違うのだろうか?日本の公共事業の場合、投資したお金は地主や大手ゼネコンの蓄財に回るので賃金上昇や消費拡大にはつながらない。




≪ 前回からの注釈 ≫

(注1)中小企業等協同組合法第1条(法律の目的):この法律は、中小規模の商業、工業、鉱業、運送業、サービス業その他の事業を行う者、勤労者その他の者が相互扶助の精神に基づき協同して事業を行うために必要な組織について定め、これらの者の公正な経済活動の機会を確保し、もってその自主的な経済活動を促進し、且つ、その経済的地位の向上を図ることを目的とする。

(注2)平和条項:争議行為の開始についての手続的順序を定めるものが多く、これを「平和条項」という。しかし争議行為は元来使用者に損害を与えることを目的とするものであるから、権利濫用の法理は妥当しない。反対に、平和条項においてストライキの開始手続きや予告日数につき著しく不当な拘束を付するものは、ストライキ弾圧の色彩つよく、当該条項は無効と判断されることになる(宮島尚史「争議対抗手段の法理」p74)。

(注3)独禁法第22条(適用除外要件): この法律の規定は、次の各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為には、これを適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない。①小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること。②任意に設立され、かつ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること。③各組合員が平等の議決権を有すること。④組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること。

(注4)下請振興基準 第4:対価の決定の方法の改善 (1)取引対価は、取引数量、納期の長短、納入頻度の多寡、代金の支払方法、品質、材料費、労務費、運送費、在庫保有費等諸経費、市価の動向等の要素を考慮した、合理的な算定方式に基づき、下請事業者及び親事業者が下請中小企業の適正な利益を含み、労働時間短縮等労働条件の改善が可能となるよう、協議して決定するものとする(2016年12月14日改正)。



  【 くさり5月号より 】

 
 筆者プロフィール
 
  要 宏輝  かなめ ひろあき
 
 1944年香川県に生まれる。
<運動歴>1967年総評全国金属労働組合大阪地方本部書記局に入局/1989年産別合併(第一次)で全国金属機械労働組合になり、1991年に同大阪地方本部書記長/1999年産別合併(第二次)でJAM大阪副委員長、連合大阪専従副会長/2005年定年後、連合大阪なんでも相談センター相談員/2009年1月連合大阪訴訟(大阪府労働委員会労働者委員再任妨害、パナソニック偽装請負批判論文弾圧、「正義の労働運動ふたたび」出版妨害、不当労働行為企業モリタへの連合大阪会長謝罪事件の四件の人格権侵害等訴訟)/2009年5月和歌山労働局総合労働相談員
<公職等>1993~2003年大阪地方最賃審議会委員/1999~2008年大阪府労働委員会労働者委員
<著書>「倒産労働運動―大失業時代の生き方、闘い方」(編著、柘植書房、1987年)/「大阪社会労働運動史第六巻」(共著、有斐閣、1996年)/「正義の労働運動ふたたび 労働運動要論」(単著、アットワークス、2007年)/「ワークフェア―排除から包摂へ?」(共著、法律文化社、2007年)など
<最新の論文等>「連合よ、正しく強かれ」(現代の理論2009年春号)/「組合攻撃したものの法的には負けっぱなしの橋下市長」(週刊金曜日2015.2.6号)/「結成28年で岐路に立つ『連合』」(週刊金曜日2017.8.25号)など

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