関西の中小企業と労働者が生き残りをかけた「闘い」に立ち上がった。7月2日、生コン産業政策協議会(生コン産労・全港湾大阪支部・連帯ユニオン)は10春闘の解決を目指し、ゼネラル・ストライキ(ゼネスト)に突入。多くの建設現場が施工休止状態になった。このゼネストの要求は、業界団体が『危機突破総決起集会』での〝決議〟を遵守することであり、集会決議文通りに適正価格の収受と契約形態の変更を求めるものである。労使は、『第5回10春闘集団交渉』において、「生コン価格の値上げと出荷ベースへの契約変更」を確認し、7月からの実施を約束した。しかし、商社・ゼネコン・セメントメーカーは損害賠償請求や納入代金の支払拒否を協同組合に通達するなど、中小企業と労働者の起ち上がりを封じ込めようとしている。
10春闘の経過/建設現場は施工休止へ 7月2日より、生コン産業政策協議会は原価割れした生コンの適正価格収受と契約形態変更を求めてゼネストに突入した。以来、多くの建設現場がストップしている(7月14日現在)。 政策協議会は10春闘集団交渉で、大阪兵庫経営者会に対して『大阪広域生コンクリート協同組合(以下、広域協組)』の事業改革(値上げ・出荷ベース)を強力に求めた。3月31日の第4回集団交渉は最終回答日に指定されていたが妥結に至らず、政策協議会は4月からの値上げと出荷ベース契約実現を最優先とするために「交渉決裂」を宣言(経営側は「中断」ととらえる。労組側は旗・腕章闘争を開始)。以後、独自にコンプライアンス遵守と過剰サービス撤廃の活動を継続してきた。 しかし、経営側が一旦約束した適正価格1万8千円(/リューベ)の収受と契約形態の変更は4月~5月の2ヶ月間で進展がみられず、事態を打開するために労使は第5回集団交渉を6月3日に開催。その席であらためて値上げと出荷ベース契約実現の具体的公約を労使は確認した。
政策協議会との 交渉結果をもとに 6月8日、大阪広域協組は理事会を開催、第5回集団交渉で経営者会が政策協議会に約束した、業界再建の具体策(適正価格の収受と契約形態の変更および違反組合員企業への処分)を決議した。同日、阪神地区生コン協同組合も広域協組と同様の決議を行った。
各協組が改めて新価格、出荷ベース決議 7月からの契約変更に向けて6月27日、生コン関連32団体は『危機突破総決起集会』を開催。各協同組合代表は壇上に立ち、それぞれ業界再建への決意を表明し、決議を行った。この日、中小企業と労働者が主体となり、生コン関連業界再建に向けた大きなうねりを生み出した。 これにより、各協組は関係取引先への説得期間猶予を6月末とし、7月1日より適正価格の収受と出荷ベース契約への変更を決定。 一方、政策協議会は、協組の決定に従わない商社、販売店、ゼネコン等に対して適正価格の生コンを購入するように要請。同時に各協組には危機突破集会の決議通り、価格ダンピングを強要するゼネコンには生コンを納入しないように申し入れを行った。
協同組合は中小企業の権益を守るもの 協同組合とは本来、大企業と比べて社会的な影響力や資本力に圧倒的な差がある中小企業が、大企業と対等に取引が出来るための弱者の結集体である。従って、協同組合は中小企業の権益を守るものでなければならず、組合員企業は相互扶助の精神で互いに助け合い、共生を図り、共に栄えるものでなければならない。よって、そこに大企業の思惑や支配介入を許すことがあってはならない。しかし、広域協組は結成されて以降の16年間で、「直系工場が分社化して加盟するなど、次第に結成当初の理念が崩れはじめている(広域協組組合員)」という。 広域協組は94年の結成当初、メーカーのセメント拡販政策と過当競争で崩壊の危機にあった業界を救うために、生コン価格の大幅値上げに着手した。そこには、「〝お願い〟ではなく、〝闘い〟として取り組んだ(広域協組初代理事長・松本光宣)」という歴史がある。 今また、94年の広域協組結成時と同等か、それ以上の業界崩壊の危機を目前にしている。過去、東大阪地区生コン協組があいまいな内容でゼネコン・販売店と妥協した結果、値上げの約束が反故にされたばかりか、51社の生コン工場が倒産する引き金となった。私たちに求められているのは、94年当時と同様に労使一丸となり、事業改革に〝お願いではなく闘いでのぞむ〟という精神と実行力である。
中小企業経営安定へ 圧送労組もスト突入 7月1日を迎え、商社・ゼネコン・セメントメーカー等は納入代金支払い拒否や損害賠償を匂わすなどして、協組内に混乱をもたらした。これを察知した3労組は2日よりゼネストに突入。近畿コンクリート圧送労働組合も12日よりストライキに突入した。 歴史を知る経営者からは「中途半端にはしないでくれ」と、3労組の行動に数多くの期待が寄せられている。今回、大企業に対抗するために労働者が立ち上がったが、私たちの産業政策運動は中小企業の経営安定を図ろうとするものである。そのことを中小企業経営者は肝に銘じて欲しい。
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