えん罪・弾圧NO!
他人の犯罪を明らかにすれば見返りに罪が軽くなる司法取引が6月1日から導入された。これで何が起こるか、幅広い経済犯罪が対象となる。例えば、詐欺や恐喝、薬物や銃器犯罪。脱税、カルテル、談合、粉飾決算等の経済犯罪が含まれる。
組織犯罪で、上層部の指示や命令を立証するには下の立場の関係者の証言が欠かせないことから、検察は、有効な捜査手法となると期待している。末端の実行役の起訴の見送りと引き換えに上層部の関与について供述を引き出す流れが作られる。
このことで、司法取引で利益を得るために虚偽の供述を行い無実の人を巻き込むケースも当然あり得る。大いに疑問を抱かせる制度だ。制度開始前から指摘されてきた懸念が現実化してしまった。検察官が企業に対して責任を求めない(不起訴)ことを約束したうえで捜査に協力し、不正行為を実行した人物だけ立件(起訴)し、個人だけに罪を被せることができる、極めて危険性の高い制度である。
<日本で司法取引成立して初の事案>
タイでの火力発電所建設をめぐる贈賄容疑で、東京地検特捜部は、大手発電機メーカーの元役員らは不正競争防止法違反(外国人公務員への贈賄)罪で在宅起訴。対する大手発電機メーカーには捜査に全面的に協力をする見返りとして、刑事責任を問わないというものであった。
真相解明どころか、組織の責任逃れのために逆利用されるという矛盾がある。懸念されるのは今後、摘発によるイメージダウンや経済的損失を避けるため、司法取引を利用する企業が横行しないか、という点だ。
しっぽを切り離して逃げるトカゲのように、企業が不祥事の責任を下の者に押し付けて保身を図るなら、制度の公平性は保てない。真相解明どころか、本来罰するべき首謀者あるいは組織の罪をみすみす見逃す恐れがあり本末転倒だ。制度の根本的欠陥が浮き彫りになっている。
新たなえん罪を生む危険性がつきまとい、そして、労働組合弾圧にも利用されるのだ。
特に関生労働運動では、協同組合型運動もこの制度で狙われやすくなる。だからこそ、権力資本の悪用が横行しかねない司法取引制度は廃止すべきだ。
【 くさり8月号より 】