幹部教室
●社会保障制度について
今回は、名古屋グロック担当執行員から「福祉―社会保障制度について」というテーマで、高齢化社会を迎る日本において問題となっている点や、労働組合としてどう立ち向かうべきなのか講義を受けた。
最初に執行委員の自己紹介で、社会保険労務士・介護福祉士・介護声援専門職の資格取得の経緯が説明された。
◆資本主義と社会主義、歴史から学ぶ必要性◆
その後に、「資本主義と福祉・社会保障は根本的に矛盾し、働かなければ食べていけない労働者階級が存在することで資本主義は成立し、労働者階級の文化的生活が無条件に保障されれば資本主義は成立しない」と、資本主義社会が労働者を分断し差別化をはかることで進歩していく一方、労働運動と社会保障を求める運動は双方を必要とし促進することで多くの人たちの生活水準が維持されてきたという資本主義と社会主義の歴史が紹介され、それを見ていくことの必要性が提起された。
◆社会主義運動に対し資本主義の防衛目的◆
まず、世界で最初の社会保障のひとつとしてイギリスで1601年に施行されたエリザベス救貧法は「劣等処遇の原則=働く者を上回ってはいけない」とし、1722年施行のワークハウステスト法では「各教区のワークハウスに有能貧民を収容し就業を強制」などとした。これらは現在の生活保護の原則と同じになっていった。
その後、1929年に発生した世界恐慌はソ連をのぞく世界各国を不況のどん底に落とし入れた。他方、ソ連は医療の社会化を進めて1937年に医療を社会保険から外し、無料で全国民が医療を受けられる制度・ユニバーサルヘルスケアを作った。また、国家社会主義を標榜するナチス・ドイツでは国民皆保険を推進した。
それまで社会保険制度に大きな関心を示さなかったアメリカも制度の創設に踏み切らざるを得なくなり、ルーズベルトのとったニューディール政策の一環として、1935年に連邦社会保障法が制定され、失業保険と老齢年金が整理された。
上記のように社会主義運動に対する資本主義防衛として社会保障制度が形成されてきた歴史が詳しく説明された。
◆豊かな者だけ豊かに、大企業ばかりが減税◆
現在の日本の社会保障制度は財政問題を理由に、老齢年金・介護保険・社会保険・雇用保険等の支給を切り下げつつ、「豊かな者は豊かに、貧しい者は貧しく」の政策となってしまっている。しかし、国家財政問題の原因は、高所得者や大企業が国庫に納める税金がどんどん低くなっていることが主な原因であることが明らかにされた。
これから日本は超高齢化社会を迎えるが、階級的視点に立つと、社会・福祉制度とは支配する者とされる者の力関係であり、労働運動と福祉も求める運動を前進させることが今後の制度を発展させていくことになることを学習した。
【 くさり6月号より 】