部落差別解消推進法が昨年12月16日に施行されました。
「部落差別」の言葉を冠した初めての法律であり、国や自治体の責務として相談態勢の充実や教育・啓発、実態調査の実施を明記したものです。
自民党は2012年12月の衆院選で政権に復帰する際、民主党政権が提案した人権委員会設置法案に反対し、「障害者差別解消法」や「ヘイトスピーチ対策法」など、それそれ個別法で対応してきたことを理由として、「個別法による人権救済」を公約に掲げました。
部落問題では、2015年9月の自民党総裁選で安倍晋三の再選を支えた二階俊博総務会長(現幹事長)の派閥が、政策提言で「同和人権対策に関する法整備」に言及しました。自民党は「差別問題に関する特命委員会」に「部落問題に関する小委員会」を設置。2016年3月、自由同和会や部落解放同盟の幹部からの意見を聴き、戦前の「全国部落調査」の復刻版の出版が計画され、ネット上で同和地区の地名リストが掲示された問題などが説明されました。
参院法務委員会が参考人の意見を聴いた際、解放同盟は、ネット上の地名リストが就職や結婚の際の身元調査につながっていることを指摘。被差別部落出身を理由として家族が結婚に反対する「結婚差別」も残っていると訴えました。
一方、部落問題に対する認識をめぐって解放同盟と対立する共産党や全国地域人権運動総連合は「法律は部落差別を固定化し、同和対策事業の復活や民間団体による自治体への介入のきっかけになる」として法案に反対しました。参院法務委員会で可決された際には「過去の運動団体の行き過ぎた言動など、部落差別の解消を阻害した要因に対する対策を講じる」「教育・啓発や実態調査により新たな差別を生むことがないよう留意する」との付帯決議も、あわせて可決されています。
罰則のない「理念法」ですが、国や自治体が部落差別の撤廃に取り組むための「根拠法」となり、今後の部落解放に向けた取り組みに大きな力となることから、各地で法律の具体化を求める活発な活動が必要です。
【 記事:武谷書記次長 】