安全保障技術研究推進制度は、将来的に武器など防衛装備に使える基礎研究の育成を目的に、15年度に防衛装備庁所官の制度として創設されました。
対象は、大学や民間の研究機関、企業。採択された研究に最長3年間で計9千万円が支給されます。予算は初年度が3億円で、16年度は6億円。防衛省は17年度予算の概算要求に110億円を計上しています。この予算額の急増について、軍学共同反対連絡会や良識ある学者が憤慨しています。
科学者が戦争に加担したとの反省から、日本学術会議は1950年と67年に「軍事目的の科学研究を行わない」とする声明を出しています。こうした背景から、防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募しない大学もあります。
広島大は基本理念や行動規範をもとに「原爆の被災から復興した大学として、戦争を目的とした科学研究は行わない」として制度には応募しない。琉球大学も15年8月、学長が「研究成果が防衛装備品の製造などに将来つながることが想定される」として、実施することは差し控えるとの見解を出しています。
新潟大は15年10月、「科学者行動規範・行動指針」を「軍事への寄与を目的とする研究は行わない」と改正しました。15年度は教員が応募した関西大も、今後は応募申請を認めないと決めました。
一方、研究費をめぐる厳しい現実があることから、制度への応募を容認する大学もあります。
ノーベル賞を受賞した益川敏英・名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構長は、「研究費が減る中、現役の研究者は防衛省の資金も背に腹はかえられないと言うかもしれないが、いったん立ち止まって欲しい。資金を一度受け取れば、その研究者は直接的に軍事研究につながるテーマに一本釣りされ、深みにはまっていくと思う。科学は発達した結果、民生にも軍事にも使えるデュアルユースの問題をはらむようになり、区別をつけるのは難しい。だから、軍事研究かどうかは、どんな機関が、何の目的で資金を出しているかで判断するべきだ。」と主張しています。
国から国立大学への運営費交付金が減額され、私立大への運営費補助の割合が減少し、研究費が少なくなるなか、特定目的の資金で、研究が一定の方向に誘導されることに懸念の声があがっています。
私たちは、益川氏の危惧に敏感になり、監視することが求められています。安倍政権の戦争への道に突き進む政策の一つである、安全保障技術研究推進制度を含む「防衛費」の増額を阻止する運動を強化しましょう。
【 記事:武谷書記次長 】