= 子どもの貧困について =
■ 奨学金の落とし穴 ■
大学生向けの無利子の奨学金について、文部科学省は来年度から低所得家庭の学生に対して成績の基準を緩める方針を固めたと発表した。
奨学金が無利子貸与になるか有利子貸与になるかは、高校時代の成績で決まる。
高校受験で頑張り入学した高校で5段階評価の成績で平均が3.5を下回っていると大学進学時の奨学金申請で無利子貸与が受けられない。
もし、高校受験時でレベルを下げ、本人の実力以下の高校に入学して入れば平均3.5以上をクリアできているかもしれない。
しかし、大学入学時の奨学金が無利子になる可能性が高いからと、3年後を見据えてわざわざ高校受験でランクを下げて受験する人はいないと思う。
ここでも成績が判断基準になり、利子が付くか付かないかという差別が起きている。
実際、三人の息子を持つ親として経験を語ると、次男と三男は無利子貸与申請をしたが採用されなかった。高校時代の平均が3.5を下回っていたからだ。
大学生になり2年生に上がる時、次は大学の成績で判断される無利子貸与申請を再度挑戦してみるが、やはりダメだった。結局、大学在学中4年間、有利子の奨学金を借りていた。
長男は無利子貸与に採用されたが、無利子での貸与には限度額がある。自宅外通学で無利子貸与は月額5万1000円(国立の場合)と決まっていた。
もちろん、それだけでは下宿代や食費などの生活費は足りないので、有利子貸与の奨学金も別枠で借りていた。
大学生として学びたいと願う子ども達に、親としては希望を叶えさせてあげたい。
しかし、ひとり親の収入としては限界があり私自身が低所得だったため、子ども達各自で奨学金を借りるしか進学の道は無かった。
現在は3人の息子全員が社会人になっているが、大学卒業と同時に長男(自宅外通学)は700万円超、次男・三男(自宅から通学)は1人500万円超の借金をすでに背負っている。
夢と希望を抱き、大学生へ進学したのにもかかわらず、卒業と同時に莫大な借金を背負わせてしまったという罪悪感を母として感じている。
息子たちが定職に就き、一定の収入がある間は奨学金の返済はできたとしても、今は非正規雇用が4割を超える時代。いつどのように雇用形態が変わるかも知れない。
不安定な収入のなか奨学金という借金を20年に渡り返済しつづける。
その間に、家庭を築くかもしれない。転職をするかもしれない。あらゆる環境の変化の中で返済を続ける若者たち。
日本の宝である若い世代の人を、奨学金という借金で縛り付けるのではなく、早急に貸与制から給付型奨学金制度へ変わることを願う。
これ以上、親の貧困を受け継がず若者の貧困の連鎖を食い止めなければ、子供の貧困は永遠に続いてしまう。
負の連鎖を食い止めるために、我々にできることは何か?それを考えることが今の大人の課題かもしれない。
【 記事 : K組合員 】